修学旅行ラボ。

一生一度の修学旅行をデザインする

修学旅行の「時間配分」がおかしいのは誰のせい?(3)

※本記事を読む前に、修学旅行の「時間配分」がおかしいのは誰のせい?(1)と(2)をご一読ください。

さて、このブログをご覧の旅行業者さんがいらしたら、お尋ねしたい点があります。

あなたは旅行のプロとして「この修学旅行はちょっと無理があるなぁ」と実はわかっていながら手配・準備を進めてしまった経験はありませんか?

"お得意様"である学校側の強いご要望があった手前、言い出せないまま修学旅行を実施してしまった経験はありませんか?

「学生団体はそういうことになっているんで、って言い訳すれば、とりあえず大体のクレームは受け流せるから大丈夫だろう」と考えてしまった経験はありませんか? 

私は残念ながらそのような会話を耳にしてしまったことがあります。

 

……そんなことはあり得ない、自分は絶対にそんなことはしない、ですか?

というのであれば、さらにお尋ねします。

 

もし自社の旅行商品(募集型企画旅行)だったら、こんな無理筋の旅行計画、立てますか?

普通に考えて、こんな無茶な行程の旅行商品を販売したら、どんなクレームが来るかわかりませんよね? 私がその立場だったら、とてもじゃありませんが恐ろしくて販売できません。それとも旅行業界では「これくらいの行程はふつう」という認識なんでしょうか?

でも、それが修学旅行(受注型企画旅行)になると半ば公然と、ヘンテコな旅行計画が編み出され、最悪そのまま実施されてしまう訳です。

それはなぜか? 思うに、業者さんの頭のどこかに「修学旅行なんだから、しょうがないじゃん」という考えがあるのではないでしょうか?

まさか、「クレームと言っても所詮子どもの文句でしかないんだから、先生方に宥めすかしてもらえばいい」とか「生徒に遅れが出た? 遅れたほうが悪いでしょ、遅れないように動けよ!」とか「先生方が行きたいって言うから行程に入れたんだよ、自業自得だろ」みたいな考えがあるんでしょうか?

もしそうなら、ひとことふたこと言わせてください。

修学旅行が「自社の商品」だという自覚はありますか?

旅行業本来の「役割」から都合よく逃げていませんか?

 

厳しい表現で不快に思われた方に対してはお詫びいたします。

ですが、修学旅行は何物にも代えがたい特別な教育活動、一生一度の特別な旅行です。彼らの思い出を台無しにしたくありませんし、教員としても雑務に追われることなく本来の教育活動(修学旅行の監修・引率)に専念したいんです。

それで旅行業者さんにお願いがあります。

まず、「この修学旅行、ちょっと無理あるなぁ」とわかったら、手配・準備を進める前に学校側と相談してください。学校だってバカじゃありませんし、ある程度の融通は利かせられます。そもそも修学旅行は「貴社の商品」です。となれば旅行計画の作成は、どちら様の業務ですか? 言うまでもなく旅行業者側の業務ですよね? では、学校側への質問・相談は一向に構いませんので、遅れが発生した際の対応時間も当然見込んで無理のない旅行計画を業者様にて責任をもって作成してください。

そして、学校側の強いご要望があった手前、言い出せないまま修学旅行を実施してしまうというのは悪手です。むしろ普段から”お得意様”との信頼関係を構築しましょう。基本的に教員は専門家へのリスペクトを持っています。教員とて旅行に関する専門知識は旅行業者さんに敵わないはずですから、(相手を言いくるめるという意味ではなく)難題にも専門知識と豊富な経験で受けて立つ、要望を受け入れ難いなら中身のある代案を2つでも3つでも出す、という姿勢で臨んでいただきたいです。これこそがプロフェッショナルとしてのあるべき姿だと思います。ちなみに、この姿勢は教員にも必要だと思っています。

最後に、間違っても「学生団体はそういうことになっているんで、って言い訳すれば、とりあえずクレームは受け流せるから大丈夫だろう」などとは考えないでください。バカにしているというか、下に見ているというか、そういう嫌な雰囲気、不誠実さは確実に周囲へ伝わります。もちろん生徒にも伝わり、それは5年後10年後の顧客を逃すことにもつながります。

 

修学旅行の「時間配分」は、学校側・業者側がそれぞれの役割をしっかり果たし、意見の相違は誠実な話し合いを経てお互い歩み寄ることで、十分に改善が可能です。来年の修学旅行こそはいい「時間配分」にしたいですね。

(完)